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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ749

「これは所管から言えば国土交通大臣、若しくは海上保安庁長官から説明すべき事案ですが・・・」私が中央警務隊本部で今回の中国軍の漁船を使った侵攻への自衛隊の対処の違法性を検証していた時、同じ市ヶ谷地区の防衛省では大原防衛大臣の緊急記者会見が開かれていた。つまり私の立ち入り許可は招集した記者たちに紛れ込ませたのかも知れない。だとすればOBとは言え最高検察庁の末席の次席検事は随分軽く見られている。
「昨日の午前6時頃、黄海方面から中国所属と思われる漁船団、確認できている数では154隻が東シナ海を西に向かって航行しているのを海上自衛隊鹿屋航空基地の第1航空群所属のPー1哨戒機が発見しました。これを受けて海上自衛隊はこの海域を所管する第7管区海上保安本部に通報しました。そして第7管区海上保安本部は保有する巡視船艇を出動させました」「海上(における)警備行動が発令されたままになっているんですから海上自衛隊が対応すれば良いのではないですか」「質問は指名を受けてからにして下さい」「相手は漁船なので初動は海上保安庁に対処させるべきだと判断したようです」大原防衛大臣は司会進行の官僚が唐突な質問を制限すると大半の記者がスマートホンを見ている中で唯一反応した記者の質問に真摯に答えた。
「第7管区海上保安本部は『我が国のEEZ内での操業には許可が必要だ』と通告して停船と確認のための接舷を命じましたが無視して航行を続けたため先ほどの海上における警備行動に基づき第1航空群のPー1哨戒機が阻止行動を実施しました」「具体的には」「進行方向の安全な間隔を確保した位置に爆雷を投下しました。これは1999年3月23日の能登半島沖の不審船事案でも実施しています」この質問も同じ3K新聞の記者だった。結局、この緊急記者会見での公式発表を記事にする気があるのは3K新聞だけらしい。実際、テレビ各局は許可が下りれば臨時ニュースとして中継することが多い緊急記者会見を完全に無視している。
「そうして黄海への退路を佐世保地方隊が派遣したミサイル艇に遮断された漁船団は東シナ海の全面に分散して先ほど説明した五島列島、甑島群島だけでなくトカラ列島、奄美群島への上陸を企図したんです」大原防衛大臣の説明は甑島群島での双方が多大な死傷者を出した交戦と福江島の南方海域でのAHー64攻撃ヘリコプターによる漁船団への攻撃、さらに無人になっている離島への潜入と対馬警備隊の捜索・撃破を経てようやく重大な局面に至った。甑島群島の説明の時に読捨新聞の記者が「下甑島は1997年2月3日に中国人の不法侵入があった島ですね」と確認したが、どう言う訳か周囲の記者たちに憎々し気な視線を浴びせられてそれで終わった。
「そして昨夜の8時15分頃、10隻超の漁船が奄美群島の沖永良部島の沖で中国福建省の福州基地を出航して東シナ海を北上してきた海軍の駆逐艦と合流したのです」「それでは先ほど大臣が説明された『漁船だから海保に対処させる』と言う配慮は不要になりますね」「それどころじゃあなかったんだ」3K新聞との対面問答のような記者会見に飽きてきていた他社の記者たちもこの大原防衛大臣の答えに顔を向けた。
「中国漁船は駆逐艦を追跡していたアメリカ海軍の哨戒機を撃墜した」「げッ・・・」「しかも状況から見て駆逐艦が対空用レーダーで目標を捕捉して指揮していた公算が大きい」「つまり中国海軍がアメリカ海軍に対して戦闘を行ったと言うことですか」記者会見の時間中にスマートホンで編集部と対話しているだけに見えた他社の記者も大原防衛大臣の説明を聞いてはいたことを証明するように確認してきた。
「少なくともアメリカ海軍はそのように判断したようだ。別の哨戒機を攻撃に向かわせたが間に合いそうもなかったから同盟国である海上自衛隊の哨戒機が任務を代行した」大原防衛大臣の説明が自衛隊に戻ると記者たちは再びスマートホンを操作し始めた。自衛隊を徹底的に無視するように指示されているようだ。
「それでは指名を受けた順に社名と姓を名乗ってから質問をどうぞ」「M日新聞の脇田です。宮谷副大臣は加倍派からパーティー券収入のキックバックを受けていますか」「本日の記者会見の内容に関する質問にして下さい」「逃げるのか。防衛省は組織ぐるみで隠蔽するつもりなんだろう」結局、大原防衛大臣の長時間にわたる熱弁も無駄だった。
  1. 2024/02/28(水) 15:33:34|
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