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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ767

「こっちに来て正解だったな。スクープ映像がバッチリだ」「俺が岩国から米軍の哨戒機が離陸したって言う情報をキャッチして取材予定を変更したおかげだ」「飛行計画の変更手続きをしたのは俺だぞ」福岡空港を発進して日本海で韓国海兵隊の脱走兵が乗った漁船の接近・領海侵犯を海上保安庁の巡視艇と陸上自衛隊のUHー1多用途ヘリコプターが共同で阻止している現場に飛来してきたA日新聞の取材ヘリコプターの機内ではカメラマンと記者、パイロットが互いに自分の手柄を誇示し合っていた。A日新聞は各地方局だけでなく末端の販売店や配達員からも情報が届くシステムを構築しているので岩国基地近傍の販売店からの「アメリカ海軍の哨戒機が離陸した」と言う通報に続いて萩市や長門市での目撃談が加われば行動の推理は容易だ。
「本当に大スクープだ。陸自のヘリは自分には発砲していない漁船を機銃掃射した。これを正当防衛や緊急避難と弁明しても俺たちが証拠写真をつけて否定してやる」UHー1は西部防空指令所からの助言を受けて機銃掃射を中止すると周辺空域での監視に移ったが、取材ヘリコプターは執拗に後を追いカメラマンは望遠レンズを着け替えたデジタル・カメラを構え続けている。どうやら射手の顔写真を狙っているらしい。
「それ以上に海保が陸自と共同で戦争をやったんだ。明確な海保法25条違反だ」「海保に手を出すのは止めておけ、国交省は身内みたいなものだ」速度で勝るUHー1が相手では「並行した位置から機内を撮影することは困難だ」と覚ったカメラマンは言い訳のように手柄を追加したが記者が内情を暴露した。
現場で中国の武力行使に対処している海上保安庁では自衛隊との戦友意識に近い一体感が醸成されているが東京の本庁や国土交通省の公務員労組の職員には依然として60年安保闘争の感覚で自衛隊を敵視して共同行動を妨害する者が少なくない。自衛隊の作戦計画が中国に漏洩していると疑われる事例も文書の配布先として受け取っている海上保安庁本庁内の工作員が流している疑惑が強い。実際、国土交通省は運輸省時代、航空自衛隊の偵察航空隊が北方領土のソビエト連邦軍基地の写真を撮影する時に提出した根室分屯基地を目的地とする飛行計画を航空局が在日ソビエト連邦大使館に通報していた。そのためRFー4偵察機が根室分屯基地から北方領土を掠めるように飛行しても航空基地では全て軍用機が格納されていて車両はおろか人っ子一人歩いていなかった。
「あまりここに長居すると東シナ海の本番の取材ができなくなるぞ」「福岡に寄って燃料を補給しなければ燃料切れで不時着することになる」記者がメールで記事を送り始めると手持無沙汰になったカメラマンが次の予定を指摘してパイロットも同調した。A日新聞の取材ヘリコプターは羽田、伊丹、福岡の3つの空港に配置されているが、民間用ヘリコプターの航続距離では全土をカバーすることはできない。そのため途中の空港で給油して即座に発進するのには慣れている。
「こちらでも陸自が出動しているぞ。海上(における)警備行動には入っていないだろう・・・つまり自衛隊法82条の拡大解釈、脱法行為だな」福岡空港で燃料補給を終えた取材ヘリコプターは機体の点検を省略して離陸すると東シナ海ではなく五島列島に向かった。佐賀県吉野ヶ里町の目達原駐屯地近傍の販売店から「陸上自衛隊のAHー64対戦車ヘリコプターが離陸して編隊を組んで南西方向=五島列島に向かって飛行していった」と言う通報があったのだ。この販売店の情報網は強固だが惜しむらくは自衛隊の官舎でA日新聞を購読している家庭は滅多にいないので人事異動などの噂話を収集することは難しい。自衛隊の駐屯地や基地では「朝日生命」の外交員が嫌われて営業成績が揮わず、「アサヒビール」のジュースの自動販売機も設置させてもらえないことが多い。ただし、大酒飲みが揃っているのでスーパー・ドライは別枠になっている。
「福江島の南方海上で空中待機しているな」「海上に漁船団が集合している」取材ヘリコプターが五島列島に近づくと10機前後のAHー64が福江島の南方空域で編隊を組んで旋回しながら空中待機していた。すると超望遠レンズを着けたデジタル・カメラを望遠鏡代わりにしたカメラマンが状況を察知した。肉眼では船体は見えないが海面に白い線が幾筋も引かれているのが判った。
  1. 2024/03/17(日) 15:16:53|
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