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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ800

「げッ、攻撃が始まった」数日後、本土との連絡フェリーの停泊港がある厳原地区に陸上自衛隊のヘリコプターの編隊が襲来した。それに先立って対馬市内でも南部の対馬駐屯地付近に海上からミサイルが数発射ち込まれて爆発音が響き、小さな閃光や振動と共に黒煙が上がった。厳原地区に配置されている守備隊の隊員たちは港が見渡せる2階のベランダに出て状況を確認した。ただし、この建物も韓国軍の守備隊が宿営地にしていることは潜入した海上自衛隊特別警備隊の斥候が確認している。
「UHー1が1、2、3・・・9機にCHー47が4機、どうやら厳原(いづはら)港に降りるらしいな。特殊戦旅団は何故攻撃しないんだ。しなくても良いけど・・・」対馬では対馬空港に到着した韓国海軍特殊戦旅団が守備隊を名乗るようになると残留した移住者たちも遅れて渡航してきた義勇兵と一緒に編入された。ところが若い義勇兵たちは徴兵の経験がある上、ゲームやネット番組で日常的に軍事知識に触れているが日本人の家庭ではそのような禍々しい話題は嫌われるので無知に等しかった。そのため島内の案内の任務を果たす一方で新兵としての訓練と座学に明け暮れることになっていた。
「だったらこのまま捕まった方が良いな。世界最強の特殊戦旅団と言っても47名じゃあ山猫軍団には敵わないはずだ」「それに食料が届かないようじゃあ長続きはしないよ」移住者たちは当初こそ島内でも裕福な豪邸に押し入って置いてあった金品資産を強奪して韓国で売り捌いて金を稼いでいたが北海道に続いて新潟でもロシア軍が敗退すると海上自衛隊の護衛艦と海上保安庁の巡視船が対馬周辺に出没するようになって韓国船の日本の領海内への立ち入りを阻止するようになった。さらにその時期には島内に残してあった食料や田畑の収穫を食べ尽くして飢えるようになった。
そんな窮状に救いの手を差し伸べたのが在日の南北半島人の漁民たちだったが南の民団に所属している人間は「無理せずに降伏しろ」と勧めるが、北の総連の人間は「新潟で殺された同胞の恨みを晴らせ」「後の続いてお前も死ね」とけしかけてくる。どうやら対馬への移住者たちが南の出身であることを理解していないらしい。それにしても「怨」の精神文化は南北で共有しているはずだが南の方が損得の計算が働くようになっているのは自由主義社会だからかも知れない。
守備隊の移住者たちが降伏の相談を始めた頃、厳原港の波止場に着陸したUHー1多用途ヘリコプターから下りた1個分隊の隊員たちは周囲を警戒しながら離陸を見送った。そしてCHー47輸送ヘリコプターが下に吊ったまま着地させた高機動車に1名が駆け寄ると空中輸送員がフックとワイヤーを外すのを待って発進させた。
「ハンドハラ、降伏せよ」「ジョオハンイョングホン・ギョエグハンダ、抵抗すれば攻撃する」高機動車はハンドマイクで韓国語と日本語で交互に呼びかけながら勝手知ったる市街地を進行する。UHー1Jの最大搭乗者数は正副パイロット以外に11名なので1機当たり1個分隊、9機なら2個小隊=1個中隊で厳原地区を制圧するようだ。
「動くな、銃を置け」「鉄砲は持っていません。僕たちを保護して下さい」海上自衛隊特別警備隊の斥候が確認した厳原地区の守備隊宿営地に近づくと似合わない迷彩服を着た5人の中年男性が歩いてきた。5人とも手を上げずに掌を前に突き出している。
日本では「万歳」をする時に掌を内側に向けないと「降参」を意味すると指導される程両手を上げて降伏することは定着しているが韓国ではそれ程でもないらしい。その前に昔は選挙の当選祝賀で万歳三唱する時、候補者と妻は神妙に頭を下げたものだが最近は満面の笑顔で一緒に両手を上げているのは何故だろう。
「武器はどうした」道路上に伏せさせて身体検査をすると投降した中年男性たちは本当に丸腰だった。これには激烈な士気と冷徹な覚悟を以って乗り込んできた先遣隊の分隊長も呆気に取られてしまった。そこで最年長の男性に日本語で質問してみた。
「あの鉄砲は韓国海軍の特殊部隊が持ち込んで配ったんです。それでも数が足りないので外を見回りに行く人間だけが持つようにしていました。ところが何日か前から見回りに行った人間が行方不明になって鉄砲も一緒になくなりました」「なるほど」その時、上空を掠めるようにCー130輸送機が通過していった。上島への空挺降下だ。
  1. 2024/04/22(月) 15:30:40|
  2. 夜の連続小説9
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